マイクロ波管
マグネトロン

2-1 マグネトロンの構造(2)

マグネトロンの基本的構造は、図8.2.2 にあるように電子を放出する(エミッション)ためのフィラメント(カソ-ド;陰極)と電子流を集めるアノ-ド(陽極)を備えた二極管であり、普通の二極真空管と異なるのはアノードの中心線方向に一定の磁界を与えた状態でカソ-ドとアノ-ドの間に高電圧を印加し、電子の流れる軌道を円運動になるよう制御し発振させるものである。

尚、同じ電子を放出する陰極で、フィラメント及びカソードとの表現があるが、その使い分けは次の通りである。前者は直接ヒータに電流を流してジュール熱により加熱・温度上昇させて、直接電子を放出するもので(直熱形)、線状の純タングステンやトリウム入りタングステン(略称;トリタン)が用いられてる。後者はカソードと称するニッケルなどの金属円筒状外表面に電子放出用酸化物を塗布した金属管の内部に、絶縁してヒータを組み込んだもので、そのヒータに電流を流し加熱・温度上昇したヒータからの輻射熱(真空管なので伝導・対流は存在しない)によりニッケル管を間接的に加熱し、塗布されている電子放出用酸化物を加熱するものである(傍熱形)。両者の構造上の違いで電子放出温度に達する予熱時間が異なり、前者は「秒オーダ」と短いが、後者は「分オーダ」と長くなる。更に、前者は電圧変動の影響を受け易く、後者は受け難い面もある。マグネトロンでは予熱時間が短い直熱形が多用されており2M164,2M68とも直熱形を採用している。

図8.2.2 マグネトロンの構造(断面俯瞰)

磁界の印加法は、小電力管用(出力3kW以下)ではフェライト、アルニコ系永久磁石を利用し図8.2.2 のように管球と永久磁石が一体化(パッケージ形)されている。

大電力管用(発振周波数2450MHz;発振出力3kW以上、915MHz;~100kW)では電磁石を単独で用いるか、或いは永久磁石と電磁石を併用したものの何れかである。

アノード内部には発振周波数に応じた空洞共振器が形成されており、共振器の1ヶ所にアンテナを設けて、共振器内部で生じた高周波電界にてアンテナに高周波表皮電流が発生、出力ドーム内のアンテナより高周波結合器を介しマイクロ波エネルギーを外部へ放出するようになっている。

冷却方法は、小電力管用は強制空冷(冷却フィン)、大電力管用は水冷で、陽極の外周に水冷ジャケットや冷却パイプを巻き付けて冷却するようになっている。