マイクロ波加熱の応用例
具体的応用例と装置例 紙・印刷・塗装関係業界 印刷インクの乾燥、伝票の接着、背表紙の乾燥

紙・印刷・塗装関係業界

(1) 印刷インクの乾燥、伝票の接着

図19.3.33 高電界形加熱炉

本応用例は高速走行する紙(電話利用明細書など)に印刷された水生インクを急速乾燥するための高電界方形導波管形マイクロ波乾燥炉である。本装置の乾燥能力は、発振出力6kW(発振出力1.5kW発振機を4台使用。周波数2450MHz)で紙幅18インチの再生紙の場合、約280m/分の走行速度で乾燥可能である。

加熱炉の特長は、既に説明した高電界導波管形加熱炉を利用しており、発生電界をより高くし(理論最大発生電界強度:約710V/cm)、従来方式に比較して約2.1倍 被加熱物へのマイクロ波エネルギーの吸収度合いの向上を図っており、更に加熱炉の長さも大幅に短縮するとともに(従来方式比:約1/3)、マイクロ波吸収効率も80%以上にと大幅に改善(従来方式比:約2倍)されたものとなっている。

本加熱炉は印刷紙高速搬送装置、データ印字用インクジェットプリンタ(輸入品、フルカラー対応)、印字データ処理パソコンなどと本加熱炉を3式(合計出力:18kW)組み込んだ全長10m程度の一連の総合的な印刷システムとなっている。

図19.3.33は本加熱炉の外観で、マイクロ波応用機器を収容した筐体(背面側)及び4式の乾燥炉を収容した筐体(手前側で扉が開いた状態)を示している。

尚、乾燥処理開始段階に、加熱炉が冷えているため蒸発水分が加熱炉内に結露して、その水滴が印刷紙に落下すると紙切れ不具合が発生するので、加熱炉を温風で予熱している。

(2) 電話帳など本の背表紙の乾燥

ラダー形加熱炉を利用して本の印刷部を加熱せずに、背表紙の糊付け部のみを選択加熱・乾燥することが可能である。ラダー形加熱炉は狭い範囲に非常に高い電界が得られる特徴を利用したものである。出力は数kW程度のものがあるが、ラダー面は非常に強い電界となっておりゴミなどが付着すると放電が発生するなどの使い難さもある。