初心者のための高周波誘電加熱
4.電界とは電圧のかかった空間のこと

ここまで、物質に電圧をかけると導電体では電流が流れ、誘電体では誘電分極が起こることを説明してきました。ところで、「電圧をかける」とは具体的にどのような状態をいうのでしょうか。
(図1-4-1)は小学校でも習う、直流回路で豆電球が点灯している図です。このとき、電池のプラスの電極からマイナスの電極に向かって電流が流れています(実際の電子の流れはマイナスからプラスです)。電流が流れる理由は、プラスからマイナスに向かって圧力が働いているからです。この圧力が電圧です。
一方、(図1-4-2)は直流回路上に2枚の金属板を隙間をあけて置いたものです。隙間があいているので電流は流れていません。しかし、電池のマイナス側に近い金属板には電池から移動してきた電子が溜まり、金属板全体がマイナスの電気を帯びます。逆に、プラスの電極側に近い金属板は電池に電子を奪われて、プラスの電気を帯びます。このとき、プラスを帯びた金属板からマイナスを帯びた金属板に向かって電圧がかかっています。(図1-4-2)の金属板の点線の矢印は電圧のかかる方向を示しています。この電圧のかかった空間を電界といい、プラスからマイナスに向かう電圧の方向を電界の向きといいます。また、電圧のかかる方向を示す点線の矢印を電気力線といいます。

電界は日常でもよく発生します。冬場にドアノブを触ってバチッとくるのは、マイナスの電気を帯びたドアノブとプラスの電気を帯びた指先が接触する瞬間に、ドアノブと指先のわずかな隙間に非常に大きな電圧を持つ電界ができて、一瞬、電子が飛んで電流が流れるからです。この現象の大規模になったものが雷です。雨雲の下の部分がマイナスを帯びると、その影響で地上の表面がプラスを帯びます。これによって、雨雲と地表との間に大きな電圧を持った電界ができ、放電という現象が起こって火花が走ります。これが雷です。

図1-4-1/豆電球が灯る直流回路

図1-4-2/直流回路上にできた電界