安全基準・電波防護指針・使用許可申請
電波防護指針・安全基準・使用許可申請 漏洩電波の人体、機器への影響

漏洩電波の人体、機器への影響

(1) 論文「電磁波の生体への影響」

漏洩電磁波の生体への影響がTVなどで話題になったことがあるが、エレクトロヒート(2002,No,124 日本電熱協会発行)に「電磁波の生体への影響」などが紹介されている。その中からの幾つかの事柄を抜粋紹介する。

以下のような報告を見る限り、マイクロ波領域での漏洩電波の防護指針を守れば、生体への影響は無いと考えられている。

① 高周波電磁界曝露による生体膜機能の影響、細胞増殖及び形質転換、細胞内情報伝達の影響、DNAへの影響など「非熱作用」に対する多数の観察報告があるが、これらを他の研究者が再現試験を試みても同じ結果が得られないことが多いと言う。これは実験容器内の環境や試料のバラツキなどが十分に制御されていないためと考えられる。

例えば、細胞レベルでの試験管内では、生命活動による恒常性維持の機能から切り離された場合が多く、電波を照射した試料としない試料の結果を比べても違っていてむしろ当然で、電波がどうしてその違いを生じさせたかを検討する必要がある。生物学作用があるかもしれないが「生物学作用がある」ことと「健康影響がある」こととは同一で無く、人体の生命活動のダイナミクスと比べ、防護指針以下であれば「非熱作用」は殆ど無視できると考えるのが当然である。

② 1997-10郵政省で「生体電磁波環境研究推進委員会」を開催し、電波の生体安全性評価に関する研究・検討を医学的及び工学的視点から推進しており、ラットの脳に「SAR=2W/kg」を短期間曝露させた場合、何らの影響も無かった。

③ オーストラリアの放送鉄塔周辺の住民に小児白血病増加があるとの報告(1996年)があるが、その後の再調査により否定された。英国での放送アンテナ1ヶ所の周辺居住者に白血病に有意な過剰リスクがあるとの報告もあるが、英国の別の鉄塔21箇所でのデータからは、そのような傾向は無いと否定されている。

尚、高圧送電線などから出る平均0.3~0.4μテスラ以上の超低周波の電磁波に、日常的にさらされる子供の小児白血病の発生確率が、そうで無い子供に比べ2倍程度に高まる可能性があるとして、世界保健機構(WHO)が各国に予防策をとるよう勧めたという新聞記事(2007-6-19:毎日)がある。

可能性があるが動物実験などでは発ガンが立証されず、因果関係があるとは言えないとも書かれており、何とも不思議な記事。但し、ISMバンド、携帯電話などで使用している高い周波数帯は対象外としている。

(2) 人体への影響

前記(1)項で記したように漏洩電波の人体への影響は、「影響がある」という確実な研究論文は無いが(影響があるという論文も追試験では再現性が無いという)、絶対安全であるという研究論文も無い(このような電波の影響に対して「絶対安全!」ということは言えない。だからといって「危険!」と言うのもでも無い由)。

但し、漏洩電波量が極端に大きければ作業者である人も火傷など負うことがある。ヒ-タ、石油スト-ブなどであれば、手で触ると熱くて瞬間的に手をひっ込めることが可能だが、漏洩マイクロ波の場合には内部加熱でもあり、そのような行動が取れないと言われており注意が必要である。更に、心臓ペ-スメ-カを利用されている方々も、ペースメーカが誤作動する怖れがあり注意が必要で、関係業務に携わらないのが原則である。

(3) 機器への影響

漏洩電波量が少なくても光センサなどの各種検出器、AGV(Automatic Guided Vehicle。自動搬送車)などに利用されている障害物検知通信手段などが、もろに影響を受けることがある。前者の場合、メ-カによりノイズに強い物、弱い物がありノイズに強い物を選択し、ケ-ブル・センサ・アンプなどシ-ルド処理を行えば使用出来る。

後者の場合、通信周波数として2437MHzを利用した物は対策実施困難で、2472~2493MHzを利用したSS通信[スペクトラム拡散(Spread Spectrum/SS)通信]の採用を検討する必要がある。

シ-ケンサなどは、一般には制御盤内に取り付けられるので問題発生は無いと言える。パソコンなどもケ-ス・バイ・ケ-スであるが、漏洩電波量が多い場所で使えば、ディスプレイ部で画像が乱れるなどの影響を受けることがある。更に、温度計などデジタル表示される機器でも表示値がフラツクなどの影響を受けることがある。このような場合、マイクロ波加熱装置の電波漏洩量を限度はあるが少なくする他、対象機器をシ-ルドケ-スに収めたり、通信ケ-ブルなどはコンジットパイプのようなシールド管に収容して配線したり、シ-ルド線を利用するなどして対処する。