高周波誘電加熱の応用例
高周波木材接着装置

木材接着は、接着剤を塗布した木材どうし密着させ接着剤が硬化するまで圧締する必要があり、圧締にはプレスが使われる。高周波接着プレスは、プレス定盤に高周波電極板を組み合わせたもので、圧締しながら高周波加熱することができるため効率のよい接着を行うことができる。周波数は13.56MHzが多く使われ、高周波出力はハンディタイプのスポット接着装置の400Wから、大型高周波プレスの200kWクラスまで様々である。

1.集成材接着プレス機

集成材とは、ラミナと呼ばれる挽板を互いに平行にして、長さ、幅および厚さ方向に集成接着したものである。一般の住宅で使用される柱は、105㎜角、120㎜角で長さ3m、4mであるが、大型木造建築で使われる大断面集成材は、短辺300㎜以上、長さが10mを超えるものもある。フェノール樹脂接着剤(PF)、レゾルシノール樹脂接着剤(RR)、メラミン樹脂接着剤(MR)などの熱硬化型接着剤の場合はホットプレスが、水性高分子イソシアネート樹脂接着剤(API)の場合はコールドプレスが使われるが、接着時間に1時間程度かかり生産性が悪い。高周波誘電加熱を使った接着プレスでは、6~9分のサイクルで接着加工することができる。

下表に高周波集成材接着プレスの概略仕様、下図に外観を示す。自動搬送装置にて連続的に接着剤が塗布されたラミナは、反転され接着面を縦に垂直方向に並べられ上下2枚の電極内に投入される。電極内いっぱいにラミナが配置されると、電極板で上下圧をかけながら、接着面に対して側圧プレスにより強く加圧し選択加熱方式にて高周波加熱する。上下の電極盤は、蒸気や電熱ヒータにより80~100℃に加熱されており、放熱を防ぎ加熱温度の均一性を高めている。接着層温度80~120℃まで高周波加熱されると30秒~1分間圧締養生され、接着硬化した集成材となる。

表 /高周波集成材接着プレスの概略仕様

高周波出力 60kW
周波数 13.56MHz
プレス圧力 上下圧30ton、側圧135ton
電極サイズ 幅1.05m × 長さ4.2m

図 /高周波集成材接着プレス

2.フラッシュドア接着プレス機

横桟や枠材のなどの骨材の両面に合板などの化粧板を接着し、内部にペーパーハニカムなどを組み込んだ構造の扉をフラッシュドアという。軽量化されているため住宅の扉だけでなく、家具などの収納扉に広く利用されている。接着剤は、主に酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤(PVAc)や水性高分子イソシアネート樹脂接着剤(API)が使われている。接着剤は、枠や桟材に塗布されるため接着層は1~2㎜の薄い化粧板の下にある。この接着層に対して、効率的に高周波誘電加熱するためにグリッド電極を用いた表面加熱方式が使われている。下表3と下図にフラッシュドア接着プレスの概略仕様と外観を示す。上下のプレス盤面にはそれぞれグリッド電極が配置され、化粧材、枠材、化粧材の順に積層されたフラッシュドアをプレス加圧しながら上下の2つの接着層を同時に高周波誘電加熱する。30~45秒程度で接着層温度80~100℃まで加熱することができ、効率的な短時間接着が可能である。

表 /高周波フラッシュドア接着プレスの概略仕様

高周波出力 40kW
周波数 13.56MHz
プレス圧力 上下圧20ton
電極サイズ 幅1.4m × 長さ2.7m

図 /フラッシュドア接着プレス